朝、窓辺のミディ胡蝶蘭の葉にそっと触れたら、ひんやり冷たくなっていました。
そんな経験から冬のことが気になりはじめた方へ。
鎌倉でガーデニング講師をしている野中真理子です。
冬越しでいちばん気をつけたいのは、昼の日当たりよりも夜の窓辺の冷え込みです。
この記事では、夜の窓辺がなぜ危ないのか、夜だけ置き場所を変える方法、動かせない日の防寒、冬の水やりまでをお伝えします。
昼の窓辺と夜の窓辺は、まるで別の場所です
胡蝶蘭の育て方を調べると、たいてい「明るい窓辺に置きましょう」と書いてあります。
これは間違いではありません。
ただ、冬にかぎっては「昼の窓辺」と「夜の窓辺」を分けて考える必要があります。
窓ガラスのそばは、夜になると一気に冷える
冬の窓ガラスは、外の冷たさをそのまま部屋に伝えてしまいます。
暖房であたたまった空気も、冷えたガラスに触れると冷やされ、重くなって下へ流れ落ちていきます。
この現象は「コールドドラフト」と呼ばれていて、All Aboutの家電ガイドの解説でも、暖房をつけているのに寒く感じる原因として取り上げられています。
窓のすぐ下や窓際の棚は、その冷たい空気の通り道です。
昼間は日だまりの特等席だった場所が、日が落ちると部屋のなかでいちばん寒い場所に変わってしまいます。
胡蝶蘭が「寒い」と感じはじめる温度
三重県の農業改良普及センターがまとめたファレノプシス(胡蝶蘭)の管理方法では、晩秋から春は暖かい室内の窓辺に置き、10℃以上を保つよう書かれています。
家庭で冬を越すときの最低ラインは、まずこの10℃と覚えておいてください。
一方で、胡蝶蘭の育種会社であるAnthuraは、胡蝶蘭には16〜17℃以上が必要で、それを下回ると傷むリスクが大きく上がると説明しています(Anthuraの温度障害の解説)。
10℃は「なんとか耐えられる温度」、15℃以上が「元気に過ごせる温度」くらいに受け取っておくと、判断しやすくなります。
窓辺に温度計を置いてみてわかったこと
わたしがこのことを実感したのは、胡蝶蘭を育てはじめて3年目の冬でした。
窓辺の鉢のとなりに小さな温度計を置いてみたのです。
夕方6時には18℃あった窓辺が、明け方には9℃まで下がっていました。
同じ部屋の、窓から2メートルほど離れた棚の上は14℃。
たった数歩の距離で、5℃もちがっていました。
その冬、窓辺に置きっぱなしにしていた一鉢は、下の葉から少しずつ元気をなくしていきました。
置き場所に迷ったら、まず一晩はかってみる
それ以来、毎年秋の終わりになると、わたしは置き場所の候補に温度計を置いて一晩ずつはかるようにしています。
使っているのは、一日のうちの最低と最高の温度を記録してくれる「最高最低温度計」です。
ホームセンターや園芸店で手ごろな値段で手に入ります。
朝起きたときに見るのは、いちばん下がった温度です。
夜中の冷え込みは、起きている時間にはなかなか気づけません。
明け方の最低温度が10℃を下回る場所は、冬の夜の置き場所の候補から外します。
15℃前後を保てる場所が見つかれば、そこが夜のお引っ越し先です。
ミディ胡蝶蘭は鉢が小さいぶん、中の植え込み材も少なく、まわりの冷えの影響を受けやすいと感じています。
大輪の鉢なら平気だった場所でも、ミディには寒すぎることがあるのです。
「なんとなく大丈夫そう」ではなく、数字で確かめておくと安心して冬を迎えられます。
夜だけ「お引っ越し」させる冬の置き場所
わたしがたどり着いたのは、昼と夜で置き場所を変えるという方法です。
ミディ胡蝶蘭は鉢が小さくて軽いので、この「お引っ越し」がしやすいのです。
日中はレースカーテン越しの窓辺で光を浴びせる
冬でも、胡蝶蘭にとって光は大切です。
晴れた日の日中は、レースカーテン越しのやわらかい光が当たる窓辺に置いてあげてください。
冬の日差しは弱いので、春や夏ほど葉焼けを心配しなくても大丈夫です。
ただし、ガラスに葉がふれるほど近づけるのは避けましょう。
夕方、カーテンを閉める前に部屋の内側へ
日が傾いてきたら、カーテンを閉める前に鉢を部屋の内側へ移します。
わたしは「カーテンを閉めるときが、お引っ越しの合図」と決めています。
こうしておくと、うっかり忘れることがほとんどありません。
気をつけたいのは、カーテンを閉めたときに、鉢がカーテンと窓ガラスのあいだに取り残されてしまうことです。
そこは冷気がたまりやすく、夜のあいだ冷蔵庫のなかにいるような状態になってしまいます。
移す先は、部屋の中央寄りにある腰の高さくらいの棚やテーブルがおすすめです。
避けたい場所は玄関、床の上、暖房の風が当たるところ
部屋の内側ならどこでもいい、というわけではありません。
玄関や廊下は、人が出入りするたびに外の冷たい空気が入ってきます。
床の上も、窓から流れ落ちた冷気がたまる場所なので避けたいところです。
反対に、暖かいからといってエアコンやファンヒーターの風が直接当たる場所に置くのもよくありません。
温風が当たると葉や根が急に乾き、かえって株を弱らせてしまいます。
「人が座って心地よい場所」が、胡蝶蘭にとっても心地よい場所だと考えてみてくださいね。
動かせない日のための、窓辺の防寒
旅行で家をあける日や、うっかり帰りが遅くなる日もあります。
窓辺に置いたままにするしかない夜のために、わたしが続けている工夫をお伝えします。
段ボール箱をかぶせて、夜だけ毛布代わりに
いちばん手軽なのが、鉢がすっぽり入るくらいの段ボール箱をかぶせる方法です。
段ボールは空気の層をつくってくれるので、冷え込みをいくらかやわらげてくれます。
発泡スチロールの箱があれば、さらに保温力が上がります。
ただし、これはあくまで夜だけの毛布です。
朝になったら必ず外して、光と風に当ててあげてください。
かぶせたまま昼を過ごすと、光が足りず、箱のなかが蒸れてしまいます。
窓と鉢のあいだに「壁」を一枚つくる
窓に断熱シートを貼ったり、窓の前に冷気をさえぎるボードを立てたりするのも効果があります。
わたしの家では、窓辺の鉢の後ろに、厚手の布をかけた小さなついたてを置いています。
ガラスから流れてくる冷たい空気を、少しでも鉢の手前で止めるためです。
大がかりなことをしなくても、窓と鉢のあいだに一枚何かがあるだけで、明け方の冷え方がちがってきます。
暖房で乾いた空気には葉水を
暖房をつけた部屋は、思っている以上に乾燥します。
寒さ対策と一緒に、乾燥にも気を配ってあげましょう。
晴れた日の午前中に霧吹きで葉の裏にさっと葉水をすると、乾燥がやわらぎます。
夕方以降の葉水は、夜の冷えで葉が冷たいまま湿っているのを避けるため、控えてください。
冬の水やりと、寒さで傷んだときのサイン
冬越しで、置き場所の次に大切なのが水やりです。
寒い時期の水は、冷えを呼びこむ原因にもなります。
水やりは晴れた日の午前中に、ぬるま湯で控えめに
冬の胡蝶蘭は生長がゆっくりになり、水をあまり吸わなくなります。
植え込み材がしっかり乾いてから、2週間から1ヶ月に1回ほどが目安です。
与えるのは、気温が上がっていく晴れた日の午前中に。
水温は20℃前後のぬるま湯にすると、根が冷えて驚くことがありません。
季節ごとの頻度や、根の色での見極め方は「ミディ胡蝶蘭の水やり完全ガイド」にくわしく書いています。
下の葉のしおれや変色は、寒さのサインかもしれません
寒さで傷みはじめると、症状はまず下の葉に出ることが多いとされています。
葉にハリがなくなる、黄色っぽく変わる、水がしみたような斑点が出る。
こうした変化が冬に下の葉から出てきたら、置き場所の夜の温度を疑ってみてください。
寒さの傷みは、冷えた夜からしばらくたって表に出てくることもあります。
「最近は暖かい場所に置いているのに」と思っても、少し前の冷え込みが原因になっている場合があるのです。
傷んでしまったら、あわてず暖かい場所で見守る
もし寒さで弱らせてしまったら、まずは夜も15℃前後を保てる場所へ移してください。
元気づけようとして肥料をあげたり、水を多めにあげたりするのは逆効果です。
冬の弱った株は、栄養も水もうまく受けとれません。
ぶよぶよに傷んでしまった葉は、清潔なはさみで取り除きます。
株の中心の新しい葉が無事なら、春にはまた動きはじめることが多いです。
元気がないときの全体的な見直し方は「ミディ胡蝶蘭が元気をなくしたら…回復のヒント集」も参考にしてみてください。
まとめ
ミディ胡蝶蘭の冬越しは、昼の窓辺と夜の窓辺を分けて考えるところから始まります。
日中は光の入る特等席でも、夜の窓ガラスのそばは部屋のなかでいちばん冷える場所です。
- 冬の最低ラインは10℃、元気に過ごせるのは15℃以上が目安
- 日中はレースカーテン越しの窓辺、夕方カーテンを閉める前に部屋の内側へ
- 玄関、床の上、暖房の風が直接当たる場所は避ける
- 動かせない夜は段ボール箱をかぶせ、朝には必ず外す
- 水やりは晴れた日の午前中に、ぬるま湯で控えめに
わたしの家では、カーテンを閉める前に窓辺の一鉢を抱えて部屋の奥へ運ぶのが、冬の夕方の習慣になりました。
手のひらにのるくらいの小さな鉢だからこそできる、ささやかなお世話です。
今年の冬は、あなたの窓辺でも夜の温度を一度はかってみてくださいね。
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